ゆらゐの由来

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「ラブライブ!」との出会い、そして内田彩キャラソンライブを振り返って

はじめに

去る11月3日、声優・内田彩さんのキャラソンライブ『chara・melt・room』東京公演を見に行きました。
今回のライブは、内田彩さんが今まで演じてきたキャラのキャラソンのみで構成されたライブでした。個人的には「ラブライブ!」の南ことりのキャラソンがお目当てだったのですが、そのお目当て通り無事(?)「ラブライブ!」楽曲が数曲披露されました。その歌唱・演出、そして内田彩さんの発言を受け、自分が「ラブライブ!」にハマって行く過程みたいなのが強烈に思い出されました。

ライブが終わり、自分でもいろいろと考える中「この感情を言葉にせずにおくの勿体無いなぁ」という思いが強くなったので、自分が振り返る用という意味も込めて、以下自分と「ラブライブ!」との出会い、そしてそれを踏まえてライブで感じたことを書き下したいと思います。

※記事の性質上、極一部ながら『chara・melt・room』のセットリスト、及び「ラブライブ!」のネタバレを含みます

ラブライブ!」全盛期

ラブライブ!」全盛期というとアニメ放映時の2013~14年くらいかと思いますが、自分はこの時期あまりアニメを見ていませんでした。その時期家にテレビがなかったという単純な理由もありますが、今も続けている「音ゲー」に一番ハマっていた時期で、アニメを見る時間があるなら譜面の研究をするという有様でした。
更にいえば、アニメそのものは2007年くらいから好んで見ていたのですが、自分の趣味嗜好としては「バトルアニメ」「ロボットアニメ」といった戦闘描写に味があるもの、またはシリアスなストーリー展開が売りのアニメで、女の子がいっぱい出てくる「萌えアニメ」とか、「日常もの」とかは、そのフォーマットを取った時点で見ない、という状態でした。今にしてみれば変に硬派を気取っていたイタイ奴だったわけですが……

そういった背景の中、「ラブライブ!」全盛期の自分は、なにかそういうアニメが流行っていることは知りつつ「まぁ自分の守備範囲じゃないな」と興味も持たず、音ゲーのため足繁くゲームセンターに通っていたのですが、そのゲームセンターの立地がまさに「ラブライブ!」の舞台である秋葉原周辺でした。この当時、現地の「ラブライブ!」旋風は凄いものがあり、どこを見ても「ラブライブ!」一色でした。それだけで、素直でない自分は「興味のないものが氾濫していて気分が悪い」という感情だったのですが、それに拍車をかけたのが、まぁ、所謂……なファン達でした。

大量のキャラ缶バッジをカバンに付け、体にキャラのタオルを巻き、見かけとしても十分特異ではあったと思いますが、騒ぐ、無意味に走り回る……そういった行いをするファンが、どういう訳か週末になると必ず行きつけのゲーセンの側に、中に現れる。ゲームに集中したい自分にとってハッキリ言ってこれは最悪でした。ゲーム中騒がれて思うようにプレーできない、道を歩いていると向かいからダッシュしてきて肩が接触する……薄々「こんなのは極々一部の連中だけだ」と気づきつつも、そういったことが作品を嫌う「大義名分」を自分の中に創り上げてしましました。

そんなわけで、中身には全く触れないまま、その当時の自分は「ラブライブ!」を「嫌いなアニメ」「自分は絶対見ることのないアニメ」だと定義しきってしまいました。

そんな状態から「見てみよう」に至るまで

さて、そこから2年が経ち、3年が経ち、段々と秋葉原の「ラブライブ!」熱も引いていきました。無論見渡せばグッズやポスターはそこかしこに見当たるのですが、少なくとも前述するようなファンはやはりというか徐々に目立たなくなっていたように思います。
一方、自分はこの間にテレビを買い、再びアニメに触れるようになっていました。中高時代の親の目を盗んで……みたいな状態と違い、比較的自由にアニメを見れたということもあって、それこそ女の子ばかり出てくるアニメも「まぁ折角放送されてるし見てやるか」くらいの気持ちで見たりして、以前に比べると大分見るアニメの幅も広がっていました。

関係ないようで関係ある話として、自分はAmazonプライムに加入していました。加入当時は「お急ぎ便無料なら元取れるやん」くらいの気持ちで加入していたのですが、自分があまり認知しないうちに「Primeビデオ」なるサービスを開始しており、これまたいつの頃からかアニメやら特撮やら、自分が興味を持ちそうなラインナップが充実していました。それに気づいた頃と、先述のアニメに興味を取り戻した頃が比較的被っており、家にいて暇な時間はPrimeビデオでアニメを視聴するようになりました。
初めのうちは、自分が昔見ていたアニメを見直して「懐かしいなぁ」「やっぱ面白いなぁ」と振り返るような楽しみ方だったのですが、見るアニメの幅が広がっていたのに自覚があったこともあり、「今だからこそ見たことないアニメを見ないと勿体無いな」と思い、何か見たことないアニメを探そうと思い立ち……探すまでもなく、おすすめに現れたその作品こそが「ラブライブ!」でした。

大流行しただけあって、自分が親しくしていた人の中にも「ラブライブ!」ファンは少なくなく、そんな「ラブライブ!」ファンであり友人の一人・その名は「あしか」さんに、雑談がてら『「ラブライブ!」って面白いの?』と話してみた所、まぁ当然ファンなので面白いとは言うわけですが、更に「とにかく3話まで見て」という割と具体的なアドバイス(?)をいただきました。
全盛期から3年、自分・周囲の変化で作品に対するわだかまりがなくなったことに加え、その「とにかく3話まで」という言葉が後押しとなり、「まぁ、Primeなら実質無料だし」ということで次なる視聴作品は「ラブライブ!」に決定、兎にも角にも3話まではめげないぞと見始めました。

視聴開始、そして「#3 ファーストライブ」

「だって可能性感じたんだ」

視聴を始めたらこれである。

1話はやはりというか、衝撃の大きい回ではありました。いきなり穂乃果ちゃんが歌い始め、廃校に大げさにリアクションを取り、アイドルになると言い始め、最後でやっぱり歌い……後から聞いたことによれば、リアタイの頃にはこの時点で切ってしまう人もいたそうで、それもある意味しょうがないというか、分からないではないなと。
ただ、この時の自分は、ある意味無茶苦茶な演出も比較的自然に受け入れられていました。折角今まで絶対見ない、と思っていたものをわざわざ見るのだから、できるだけ楽しもうという気持ちに自然となれていたように思います。
また、「だって可能性感じたんだ」という特徴的すぎる歌詞や、さんざんコラが作られた「生えてくることり」等、かつてSNS等で何度も見かけたネタを改めて目にして「これだったのか」と思う楽しみもあり、続く2話も問題なく楽しめていました。

そして、「ここまで見て」と言われていた3話にはアッサリと、1話を視聴し始めたその日のうちに辿り着きました。

2話とある種同じノリで続いていく前編を楽しみ、ことほのうみが織りなす可愛らしい会話を楽しみ、海未ちゃんがミニスカートを恥ずかしがる流れを見て「海未ちゃん推しの人はこういう所に惹かれるんだろうなぁ」とか思いつつ、3人μ’sのファーストライブの幕が開けて、誰もいない観客席を見たときに、本当に「えっ?」ってなりました。自分が「ラブライブ!」という作品の認識を(ある種運良く)誤っていたというのもありますが、1話は演出こそ派手であれ動機作りの導入で、2話ではトントン拍子に曲やグループ名の問題が解決していき、迎えたファーストライブがこういった、山場、あるいは谷間になるという想像を全くしていませんでした。

そして、涙を流しかけたところに花陽ちゃんがやってきて、穂乃果ちゃんの決意と共に始まるファーストライブ、その「START:DASH!!」の始まり方のあまりの綺麗さ、美しさは本当に衝撃的でした。1話にも2話にも、そしてこの3話にもあった細かいツッコミどころが吹っ飛んでいく衝撃で、1曲終わる頃には完全に引き込まれていました。

結局

3話で完全に引き込まれ、結局「ラブライブ!」1期は平日にもかかわらず3日で完走してしまいました。そして3話から受けたエネルギーそのままに、2期もほぼ間をおかず完走し、気がつけば一月もしないうちに立派に「ラブライブ!」ファンと化していました。 そうして本編を全て見終わり、しばらくした後で改めて「自分は何でこんなに引き込まれたんだろう?」と考えました。まぁ、要素としてはキャラの可愛さとか話の盛り上げ方とか、当然色々あるのですが、結果自分に取って一番だったのは「絶対見ない・関わらないと思っていたものから受けた感動」という体験だったと思います。

それまでは触れることがないと決めつけていたアニメに感動し、感情移入するということ自体が、良い意味で自分の古いスタイルを否定する出来事であり、新たな視野が切り拓かれる「発見」でした。そしてそのコアとなっていたのは、やはり1期3話の「START:DASH!!」を視聴したあの瞬間でした。この体験はあくまで良くも悪くも自分の人生の過程との化学反応であり、そう簡単に共感し得ない部分かもしれませんが、そういう激情を感じるだけのものがあの3話にはあったと思います。

ラブライブ!」というアニメについて「何が一番面白いか」という問いには、結構色々な回答の仕方があると思います。ストーリー、キャラ、ライブシーン、楽曲、etc... そういった要素の中で無論自分に刺さったものも多かったのですが、一番を選ぶとなると、自分にとっては、「ラブライブ!」が苦手な時期があったからこそできた「自分の中にある古い感覚が打ち砕かれる視聴体験」だった、という回答になるでしょう。

「今が最高」

自分がハマった要因はそれとして、「ラブライブ!」は何故大流行したか、より一般的に答えを探す上では「声優によるリアルライブ」が一つの大きな要素であったということに異論はないでしょう。
アニメが始まる前からライブイベントが打たれ、しかも声優がPVそのままに踊るという「アニメとリアルの架け橋」的な要素が、ファンによる作品への期待感や愛を高めていったのは間違いないかと思います。

しかしながら、自分が「ラブライブ!」にハマった2017年は、既にμ'sがそういったライブ活動を終えた後でした。過去のライブやイベント等の動画を探すくらいハマっていた自分にとっては、これは大いに悔やまれることでした。
自分が作品から受けた感動は、作品をリアルタイムでは見ていなかったからこそのものではあったかもしれません。そうは言えども「あぁ、自分はなぜμ’sがもっと活動していた時期にこの作品にハマれていなかったのだろう」という感情は、どうしても生まれていました。

ラブライブ!」の作品中、ことあるごとにμ’sは「今が大切」「これまで、この先じゃなくて今こそが大事なんだ」といったことを口にします。これは登場キャラクター達が「スクールアイドル」という、「いつまでも今のまま(=学生)ではいられないこと」と不離な存在だからこそのセリフで、シリーズを貫く大きなテーマの一つだと思っています。このテーマは自分にも元気を与えてくれる一方で、登場キャラがいう「今」は既に過去であるということを逆に浮かび上がらせているように感じられていました。自分が暮らしている「今」は「もうμ’sが(少なくとも9人揃っての)ライブを終えてしまった『今』」なんだなぁ……と、そう考えていました。

そんな折、自分に「ラブライブ!」を勧めてくれたあしかさんから「ラブライブ!声優がソロライブでラブライブ!楽曲を歌った」という話を聞きました。確か南條愛乃さんと徳井青空さんだったかな。考えてみれば当たり前のことだったのですが、この話を聞いて「今からでも声優のライブに行けば、楽曲を生で聴けるかもしれない」という発想が生まれました。そして更に運良く、そこからあまり時間をおかない内に、自分が一番推しのキャラクター・南ことりちゃんの声優、内田彩さんがキャラソンオンリーのライブをやるという話が飛び込んできました。
これはもはや運命というかなんというか、必ず見に行かなければならないなと思い、即座に申し込み、無事にチケットを取れました。チケットを取れたのが今年2018年の8月半ば頃で、セトリ予想などしながら楽しみにライブを待ち望んでいました。

内田彩キャラソンLIVE 『~chara・melt・room~』

そしてライブ当日、実際にはチケットを取れてからこの日までは生活が滅茶苦茶に大変だった時期で、常に頭の中においておけるような状態ではなかったものの、当日になればやっぱりテンションがあがり、かなりの動悸の高まりと共に会場入りしました。
あくまで今まで演じてきたキャラのキャラソンライブということで、大半が「ラブライブ!」楽曲であるということは流石に期待していませんでしたが、歌わないということも当然ないだろうし……と期待を高めたり、期待はずれに終わるのが怖くてわざと低めたりしながら迎えた本番、一発目の楽曲はことりちゃんのソロ曲「ぶる~べりぃ♥とれいん」でした。

いくら色々予想していても一発目というのはやはり不意打ちで、もうこの時点で万感思い至り、とにかく無茶苦茶な満足感でした(ちょっとしたハプニングがあったのも却ってテンションを高めていた)。内田彩さんは(失礼ながら思い描いていたよりも)、猛烈に歌が上手く、しかも更にキャラ声で歌うのが上手く、冗談抜きでCD音源レベルの音程が生の迫力を伴ってやってくるという凄い状態で、想像を遥かに上回っていました。
そして、この日のために予習した曲だったり、予習から漏れていた曲だったりを聴きながら、再び「ラブライブ!」楽曲のゾーンに。ここで流れたのは「好きですが好きですか?」、そして「Love marginal」。「Love marginal」は特に好きな曲だったので、イントロの時点で絶叫マンになっていました。
そうする間にもライブは進み、つい最近大流行したアニメ、「けものフレンズ」の主題歌「ようこそジャパリパークへ」を歌って一旦閉幕に。

この手のライブでは、名目上は閉幕しつつも、アンコール楽曲が実際は用意されているのが常となっています。着替えを済ませて出てくるまでを待つ時間は、ライブに参加したことがない人には(あるいは参加している人でも)茶番のように感じられるかもしれませんが、自分にとっては小休止しつつその日の曲目の振り返りとか、アンコール何を歌うんだろうとか考える、それはそれで大事な時間だったりします。

そして照明が再度落ち、いよいよアンコールへと突入、聞こえてきたのは……

START:DASH!!

音楽プレイヤーで本当に、本当に何度聞いたか分からない、あのピアノの音でした。本当にあまりにも何度も聴きすぎて、3音目くらいには無意識に、何が流れているのか分かっていました。脳がそれに追いついていたかは、ちょっと怪しいですが。

自分を「ラブライブ!」にハマらせた、一番の大きな原動力だった楽曲を、一番好きなキャラが歌っているという、、、単に好きな曲がライブで流れる、というレベルを超越した感動が襲って来て、この瞬間の自分は感情処理のキャパオーバー気味でした。キモオタク全開で申し訳ないですが、この楽曲中自分は本当に涙していました。おかげでコールの時声が出なかった程です。

このライブ中、内田彩さんは曲間のMCで事あるごとに「作品の放送は終わっても、みんなが思い出してくれれば、キャラクターは生き続ける、蘇る。だからこそ今回、今まで演じ、歌ってきたキャラソンのライブをしたかった」と発言していました。この言葉が、自分に大きな衝撃を与えた「START:DASH!!」という楽曲にオーバーレイされて眼の前で披露された時、自分の中にあった「作品をリアルタイムで味わえなかったもったいなさ」という後悔に近い思いが昇華されたような感覚でした。

その感覚は、完全に言語化できるほどには理解できていません。まだ、やっぱりリアルタイムでハマっていればこんな感動を何度も味わえたのかな、という気持ちもないではありません。ただ、ライブで言われていたように、キャラクター、作品を思い出すこと、愛を伝えることがそれらを蘇らせる一つの方法なんだと思うと、今回感じたことをこうして文章に起こさずにはいられませんでした。

悲しみに閉ざされて 泣くだけの君じゃない

喜びを受け止めて 君と僕つながろう

本当にこの歌詞の通りのような体験だったなぁと、そう感じました。いざ口に出してみるとこっ恥ずかしい限りですが、感動するというのは案外原始的な体験で、そんなものなのかもしれません。

そんなわけで、二度「START:DASH!!」から衝撃を受けた話でした。